なぜ人は「待つ」ことができるのか?【スタッフ・こげら日記】
2025-04-14
「待つ」ことが好きだという人間は少ないのではないでしょうか。
私も当然待ちたくはないし、
待たずにスムーズにイケるならそれに越したことはない。
ご利用者の中にはとにかく待つのが苦手、
人並み外れて苦手だという方が少なくなりません。
少しでも待たされると機嫌を損ねる、
周囲の人々がビックリするような行動を取る方もいらっしゃいます。
ではそういうご利用者は、ずっと苦手なままなのでしょうか?
先日とあるご利用者と銀座へ、いわゆる銀ブラをしてきました。
ランチは「ハンバーグ‼」との希望。
折角の銀座なのでその辺のチェーン店では勿体ない。
高い評判を得ている銀座三丁目のハンバーグ専門店にご案内しました。
すると週末のランチ時ということもあって、
さすが高評価のハンバーグ専門店。行列が出来ています。
その列の末に並ばねばなりませんので、ご利用者と二人で並びます。
彼は元々「待つ」ことが極端に苦手で、
自傷や物損行為にいたったこともありました。
ところが、その行列へ素直に並ぶのです。
早く入りたい、食べたい気持ちは当然あるので
「ハンバーグ‼」と口にされますが、
「順番が来たら入れますので待ちましょう」という声かけだけで、
さして不機嫌になることもなく待ちます。
予想より待たされて、25分ほど入店までに要しました。
やっとお店に入るとメニューから「カレー出汁のハンバーグ」を選択。
毎朝引き立ての肉を炭火で焼き締めたハンバーグに、
「和」をテーマにした出汁をかける・・・
ほわっと出汁から食欲をくすぐる湯気が立ち昇る・・・。
銀座らしい、洗練されながらも温かみのある空間で、
ゆっくりと食事を堪能しました。ちなみに彼は普段かなりの早食いです。
待つことが苦手なはずのご利用者は、なぜ待つことができたのでしょうか?
それはこれまでの経験の裏打ちがあるからです。
私は彼との長い付き合いの中で、
いくつも名店にご案内した「実績」を持っています。
つまり、「コイツの連れていく店は間違いなく美味いはず」
という信頼と実績の積み重ねが、ご利用者の経験としてあるのです。
「なら、本当はイヤだけど待とう‼」という、
自己コントロールをするモチベーションが持ち得るのです。
何のメリットもないのに「待つ」のはただの苦痛に過ぎませんが、
その先に楽しいこと、美味しいものがあるのなら、人は待てるのです。
待てるようになるのです。
これは実際に楽しいことや美味しいものが存在している場所、
外の「社会」の中でしか経験できないこと、身に付かないことです。
ガイドヘルプ・外出支援がご利用者の生活、人生にとって
いかに大切なことであるかが、こうしたことにも示されています。
(hal)